西暦2034年、東京箱柳市。
近代化へと進み続ける波は留まることを知らず、人々に便利を与えると同時にいくつもの、かけがえのないものを失おうとしていた。
たとえば、お金。
2029年、全国に導入が完了した電子マネーシステムにより、人々は現金を持つことがなくなった。
すべてが暗号化され、どこかの誰かが管理しているらしいが、持つ人にとって重要なのは、「今月いくら使えるか?」と、無くしたら全てを失う緊張感だけであった。