『火狩りの王』
人類最終戦争後の世界。
大地は炎魔が闊歩する黒い森におおわれ、人々は結界に守られた土地で細々と暮らしていた。
最終戦争前に開発・使用された人体発火病原体によって、この時代の人間は、傍で天然の火が燃焼すると、内側から発火して燃え上がってしまう。
この世界で人が安全に使用できる唯一の<火>は、森に棲む炎魔から採れる。
火を狩ることを生業とする火狩りたちの間で、あるうわさがささやかれていた。
「最終戦争前に打ち上げられ、永らく虚空を彷徨っていた人工の星、<揺るる火>が、帰ってくるー」と。
“千年彗星〈揺るる火〉を狩った火狩りは、<火狩りの王>と呼ばれるだろう”紙漉きの村に生まれ、禁じられた森に入って炎魔に襲われたところを、火狩りに助けられた灯子。
首都に生まれ、母を工場毒で失い、幼い妹を抱えた煌四は“燠火の家”に身を寄せることを決意する。
灯子と煌四、二人の生き様が交差するとき、あらたな運命が動きだすー
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第1話 旅立ち
立ち入りを禁じられた森の中で、唯一安全な燃料となった炎魔(えんま)の体液を集める“火狩(ひかり)”の男に命懸けで救われた11歳の少女・灯子(とうこ)は、男の狩り犬・かなたと形見を返すため、首都へと旅立つ。一方、首都に生まれ育った15歳の元学生・煌四(こうし)は、工場毒によって母を失ったばかりだった。生まれつき病弱な妹・緋名子(ひなこ)とともに失踪中の父親を待つ彼のもとに、首都でも有数の富豪として知られる燠火(おきび)家の当主・油百七(ゆおしち)からの手紙が届く。
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第2話 三人の花嫁
首都へ向かう回収車の中。厄払いの花嫁として、故郷の村から夫となる男性が待つ村へと向かう紅緒、ほたる、火穂と出会った灯子。整備士兼操縦士の照三に仕事をもらった彼女は、迷惑をかけまいと懸命に働く。そのころ、燠火家を訪ねた煌四は、油百七から家族の一員として家に迎えたいと誘いを受ける。戸惑う彼に油百七は、緋名子には医者を、煌四には家庭教師や中央書庫の閲覧権、そしてある物質を研究する機会を与える。
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第3話 世界のかけら
病弱な妹・緋名子を守るため、油百七の申し出を受け入れることを決めた煌四は、油百七の娘・綺羅と燠火家の主治医・焚三に出会う。焚三から「責任を持って緋名子を治療する」という温かい言葉をかけられた煌四は、涙を流す。一方、回収車から逃げ出した火穂を追いかけた灯子は、決まりを破ったとして次の村で回収車を降りるよう、乗員頭の炸六に言われていた。そのことに納得のいかない紅緒は、照三に灯子を助けるよう詰め寄る。
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第4話 揺るる火
巨大な白竜に襲われた回収車が爆発し、火の粉が舞った。人体発火の危険からなんとか逃れられたのは、灯子と火穂、そして照三だけだった。安全な場所を求めて森の中をさまよっていた灯子たちは、木々人と呼ばれる、森とともに生きる人々と出会う。首都では、煌四が雷火の不思議な反応の原因を突き止めるため、中央書庫を訪れていた。そこで再会した恩師・火十に勧められた第三階層へ足を運んだ彼は、不思議な本を見つける。
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第5話 蜘蛛の子
森の中で、蜘蛛に襲われた灯子(とうこ)たちを救ったのは、流れの火狩り・明楽(あきら)だった。灯子たちが首都を目指していると知った明楽は、灯子たちの護衛をすると言い出す。その理由を問われた明楽は、千年彗星〈揺(ゆ)るる火(ほ)〉が帰ってくることで、世界に大きな変化が起こると告げる。一方、燠火(おきび)家では、火狩りたちの慰労会が開催されていた。綺羅(きら)と狩り犬たちを見ていた煌四こうしは、雷火らいかを売りに来たという流れの火狩り・炉六ろろくと出会う。
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第6話 首都
炉六(ろろく)の夜狩りに同行する煌四(こうし)。森の中で、首都の偵察に来ていた蜘蛛の男が火狩りたちに捕らえられている場面に出くわした彼は、蜘蛛が古代の火に近づいても燃えない体を手に入れたことを知る。一方、ようやく首都へとたどり着いた灯子(とうこ)たちは、炎魔(えんま)によって瀕死の重傷を負った照三(しょうぞう)を彼の家に運び込む。そのまま照三の家に世話になることになった灯子は、かなたと鎌、守り石を届けるため、灰十(はいじゅう)の家を捜しに出かける。
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第7話 邂逅
道に迷った灯子(とうこ)に声をかけたのは綺羅(きら)だった。燠火(おきび)家で煌四(こうし)の看病をする綺羅は、彼に灯子とかなたの話を聞かせる。体調が回復した煌四は、油百七(ゆおしち)に雷火(らいか)の威力を引き出す方法、そして炉六(ろろく)に計画の手助けをしてもらいたいことを告げる。再びかなたを連れ、灰十(はいじゅう)の家族を捜しに出かけた灯子は、ついに煌四と出会う。泣きながら謝罪する灯子に対して、かなたを送り届けてくれた礼を言う煌四は、早めに首都から離れるよう告げる。
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第8話 神々の庭
照三(しょうぞう)のための薬が欲しい灯子(とうこ)と一緒に、首都の隔離地区へと向かった煌四(こうし)。彼らは、そこに暮らす木々人から、炎魔(えんま)をはじめとするこの世界の秘密を聞かされる。そんな2人の前にしのびが現われるが、明楽(あきら)とてまりが助けに入る。神族の操るしのびを相手に、劣勢に立たされる明楽。そこへ風氏族の神族・ひばりが現われ、明楽の傷を一瞬で治して消えていった。そして、ついに灯子が、かなたを煌四に返す時が訪れる。
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第9話 雷撃砲
かなたとの再会を喜ぶ緋名子ひなこ。しかし、父・灰十はいじゅうの死を知らせても、小さくうなずくだけの妹に、煌四こうしは違和感を抱く。油百七ゆおしちに呼びつけられた煌四は、初対面を装う明楽あきらと再会。明楽は、破壊された回収車の代わりを出すことを条件に、ある取り決めを油百七と交わす。その後、自室に戻った煌四の前に突然、ひばりが姿を現わす。ひばりは、各地に散らばる蜘蛛たちが集結し、天然の火を携えて、首都を襲うと告げる。
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第10話 異形の子ら
高熱を出した緋名子ひなこが焚三たきみの病院に入院することに。その話を聞き、母・火華ひばなに真実を告げるよう詰め寄る綺羅きらは、薬を振りかけられ、意識を失う。その様子に凍りついていた煌四こうしの頭上を飛び越え、何者かが火華に襲いかかる……。一方、灯子とうこと明楽あきらは、神族に願い文を届けるために神宮へと向かう。その途中、ひばりが現われ、姫神・手揺姫たゆらひめや千年彗星〈揺るる火〉にまつわる世界の真実を伝え、彼女たちの行く手を阻む。