“立喰師”――それは、己の全知全能を懸けて言葉巧みに無銭飲食を繰り返し、飲食店主たちを震撼させる流浪の仕業師たち。
敗戦直後の東京。
混沌とした闇市の立喰い蕎麦屋に一人の男が現われた。
「つきみ。そばで」。
何やらただならぬ雰囲気を漂わせたこの男こそ、のちに“月見の銀二”として人々に怖れられた伝説の立喰師だった。