『ダロス』
21世紀末。
地球連邦政府は、人口増加、資源枯渇などの諸問題を解決するために月面開拓計画を開始した。
多大な犠牲を払いながらも計画は成功、月の裏側に都市「モノポリス」が建設された。
潤沢な鉱物資源は地球を甦らせ、人類に永続的繁栄を約束した。
だがその一方、月面開拓民(ルナリアン)は死ぬまで外すことが出来ない頭の認識リングによって常に行動を監視された上、死者は肉体を化学処分、墓標を立てて弔うことすら許されないなど、統轄局「スカラー」の厳しい管理政策に苦しんでいた。
ルナリアンが心の拠り所としたのは、モノポリス近郊に聳える巨大な機械構造物「ダロス」であった。
人の顔のようにも見えるそれは、いつ、誰が建造し、何を目的に活動し続けるのかなど、全てが謎に包まれている。
あたかも虚空を凛と見据えるかの如き威容に、未来永劫、地球の姿を見る事が出来ない人々は大いに畏敬の念を覚え、特に、計画初期から苦難を重ね、大事故発生時には避難壕として使用したこともある開拓民第一世代の老人たちにとっては、神に等しい存在であった。
月で生まれた若い世代が台頭するにつれて反連邦政府の機運が高まる中、ルナリアン第三世代の少年シュン・ノノムラと、幼なじみのレイチェルは、自らの意志と無関係に、偶然知り合ったゲリラのリーダーであるドグ・マッコイが主導する独立運動へと巻き込まれて行く。
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