『海がきこえる』
東京の大学に進学した杜崎拓は、吉祥寺駅の反対側ホームにある人影を見た。
中央線下り列車に姿を消したその人影は確かに武藤里伽子に見えた。
だが、里伽子は高知の大学へ行ったのではなかったのか。
高知へと向かう飛行機の中で、拓の思いは自然と里伽子と出会ったあの2年前の夏の日へと戻っていた。
里伽子は勉強もスポーツも万能の美人。
その里伽子に、親友の松野が惹かれていることを知った拓の心境は複雑だった。
拓にとって里伽子は親友の片思いの相手という、ただそれだけの存在だった。
それだけで終わるはずだった。
高校3年のハワイの修学旅行までは・・・。
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